ボツネタを見て

先日、米倉先生の『法科大学院雑記帳』に対する感想を後日書くとしたまま、放置していたことを思い出しました。

法科大学院雑記帳

法科大学院雑記帳

今のところ、上記書籍を読んで特に印象に残った点、考えたことは下記のとおりです。

1 法科大学院の不祥事について
  不祥事を起こした法科大学院に対する処分と学生への配慮についての提言は、例の漏洩疑惑が起きた現在、真剣に考慮する必要があると思います(米倉先生は「高校未履修問題」から、やり得、受験者の平等扱い等の問題点等について考察されています(113頁以下)が、この考察は、漏洩疑惑問題を考える上でも、妥当する点が多いでしょう)。

2 詰め込み教育・勉強について(281頁以下)
  米倉先生は、詰め込み教育・勉強の弊害を強く主張されていますが、私の経験では、特に未習者の初期段階では、一定程度の知識の詰め込みが無ければ、その後 の「考える勉強」は捗らないような気がします。「詰め込み教育・勉強が駄目だ」という話を聞くと、暗記が一切悪いことだと考える人もいますが、法律の勉強の最初のうちは、意味が分からないまま、定義、要件を覚えることも必要だと思います。つまり、頭の中に要件、定義が入っていれば、そのうち、何でこんな定義なんだろうとか、何でこの要件が必要とされるんだろうということが気になり、自分で調べたり、考えたりするようになるのではないか、ということです(米倉先生も知識の詰め込み、暗記がすべて駄目だといっているわけではないと思いますが、「詰め込み教育・勉強が駄目だ」ということを都合良く解釈して、基本知識の習得すら怠る人もたまにいるので、念のため)。

3 教員の研究について
  …この点については、「学問的研究を遂行中の教員の精神は活発に動いているので、そのような教員はあれこれと授業運営に工夫をこらすことが多くなる」、「精神が学問的研究を介して活発に動いていること自体が、授業運営にとって良い影響をもたらすからである」という主張(344頁)は、さすがに無理があると思うのですがいかがでしょうか? 学生の頃の経験からは、むしろ自分の研究分野に多く時間を割いて、他の重要な点について十分な説明をしないということの方があり得そうな気がしますが…。